ABOUT DRONE

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高齢化が進む農業において、農薬散布の救世主としてドローンが注目を集めています。

それでは、農業・農薬散布のためドローンを飛ばすには許可が必要でしょうか。

結論から言うと、ドローンによる農薬等の空中散布については、人又は家屋の密集している地域の上空を飛行させる場合があることや、物件の投下等に該当することから、航空法に基づき、事前に国土交通大臣へ許可・承認の申請を行うことが必要になっています。

詳しく見てみましょう。
1 ドローンの規制

ドローンといっても規制対象でないドローンもあります。規制対象は、200g以上のドローンを飛行させる場合です。

厳密にいうと200g未満でも飛行規制があるのですが、あまり現実的ではないのでここでは触れないことにします。

農業・農薬散布のためのドローンの場合は200g以上のドローンでしょう。したがって、飛行には以下の空域に気を付ける必要があります。



航空法による飛行規制空域は次の通りです。

①空港等の周辺空域

②人または住宅の密集している地域(人口集中地区(地域))上空

③地表または水面から高さ150m以上の空域

④緊急用務空域



これらの空域での飛行は、操縦ミスや落下により、重大な事故が起こる蓋然性が高いため、許可を受けなければ飛行させることができません。



農業・農薬散布のためにドローンを飛行させる場合は、上記②の人または住宅の密集している地域(人口集中地区(地域))上空を飛行させるかが問題となりますが、農業・農薬散布のためにドローンを飛行させる場合は、多くの場合広大な農地での利用なので、人口集中地区(地域)であることは稀でしょう。



もっとも、許可が必要なのに許可を得ることなく飛行させてしまっては罰則もあります。実際にドローンを飛行させる土地が人口集中地区(地域)か否かは、しっかりと確認しておく必要があります。

2 人口集中地区(地域)とは

人口集中地区の設定に当たっては、国勢調査基本単位区及び基本単位区内に複数の調査区がある場合は調査区(以下「基本単位区等」という。)を基礎単位として、

1)原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接して、

2)それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有するこの地域を「人口集中地区」としています。



なお、人口集中地区は「都市的地域」を表す観点から、学校・研究所・神社・仏閣・運動場等の文教レクリエーション施設、工場・倉庫・事務所等の産業施設、官公庁・病院・療養所等の公共及び社会福祉施設のある基本単位区等で、それらの施設の面積を除いた残りの区域に人口が密集している基本単位区等又はそれらの施設の面積が2分の1以上占める基本単位区等が上記1)の基本単位区等に隣接している場合には、上記1)を構成する地域に含めています。(総務省統計局HP参考)



しかし、この定義では実際にドローンを飛ばせるのかを判断するのは、極めて困難でしょう。



そこで、どの場所が人口集中地区(地域)なのかについては、【国土地理院】地理院地図「人口集中地区H27年(総務省統計局)」で確認できます。R2年(総務省統計局)に近々変わり、人口集中地区の範囲も更新される予定です。

また、誰でも使える地理情報システムである「j STAT MAP」という地域分析ツールやドローンフライトナビ(iosのみ対応)というアプリからも人口集中地区を確認できます。



なお、人口集中地区(地域)内の飛行の場合は、私有地の農地内の飛行であっても、国土交通大臣の許可を得ない限り、飛行させることはできないので注意してください。

もっとも、これは操作を誤ることで近隣の人や物件に危害を及ぼす可能性もあることから許可を必要としていますので、無人航空機が飛行範囲を逸脱することがないように、四方や上部がネット等で囲われているビニールハウス内のような場合は、許可が不要になります。

3 許可・承認の基準

申請は・飛行開始予定日の10開庁日前までに申請書の提出をします。



また、許可等の審査においては、①機体の機能及び性能、②無人航空機を飛行させる者の飛行経歴・知識・技能、③安全を確保するための体制の3つの観点から、『基本的な基準』と『飛行形態に応じた追加基準』を定め、それらへの適合性について判断されます。

様々な飛行形態が想定されること、今後の技術開発の進展による安全性向上が見込まれること等から、上記3つの観点から総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合については、柔軟に許可等の対応をするとされています。

4 まとめ

ドローンの飛行許可申請は慣れるまでに時間がかかる他、原則、飛行開始予定日の少なくとも10 開庁日前までに不備等がない状態で提出するがあるため、万全の申請をする必要があります。そのため、不明点や不安がある場合には、ドローン申請に詳しい行政書士にまずは相談することをお勧めします。

監修者
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木慎太郎(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

飛行許可申請をはじめ登録講習機関の開設やスクール運営、監査実施、法務顧問、事業コンサルティングなど、ドローン事業を幅広く支援している。
2022年の年間ドローン許認可案件は5,300件、登録講習機関のサポート数は100社を突破。

ドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。